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<黒猫のいる裸婦> 弦田英太郎

 裸婦に猫が描かれている作品となると、まずマネの「オランピア」に黒猫が登場している。日本人の作品では藤田嗣治の「五人の裸婦」や「タピスリーの裸婦」などにも猫が描かれている。どうも裸婦と猫とは相性がいいようで弦田英太郎の「黒猫のいる裸婦」にも文字通り黒猫が登場している。

 弦田画伯の描く裸婦はいずれも美人であり、容姿もすらりとしている。そのなかでもこの「黒猫のいる裸婦」はひときわ美しく描かれている。肩まで垂れ下がった長髪、きらりとひかっている瞳、筋の通った鼻、それにセクシーな唇が添えられて申し分のない美人の容貌である。

それにすらりとして、しかも瑞々しい肉体をおしげもなく横たえているのである。それでいてどこか奥ゆかしいところがある。それに一役かっているのが黒猫のような気がする。ここまでくると、たんなる裸婦ではなく立派なひとつの芸術作品といえる。

 弦田画伯にいわせると、裸婦の美しさは芸術の大きな源泉であるという。だが、それだけにあらゆる芸術のなかでもっとも困難な題材のひとつであるともいっている。この作品のなかでも弦田画伯は十分に自らの告白を立証しているようにおもわれる。

 すなわち、みずみずしいまでの肌、裸婦が醸し出す魅力的な風情、うるおいのなかにあるしっとりとしたかげり、それらがあいまってひとりの生きた裸婦が描かれているのである。

 これだけの裸婦が描けるようになるには、それこそひたむきに精進をかさねるほかに道はないのであろう。弦田画伯にとっては生涯が修行なのである。もとより、その意味では、この「猫のいる裸婦」もそのなかの一里塚であったのかもしれない。

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